日本でのブランドデビューモデルとなるグイド「シングルソールローファー 4219」。ブラック、タン、マロンの3色展開。発売は2021年8月末予定。価格未定。※2021年6月10日現在
ファッショナブルなシューズを正規輸入・展開しているハイブリッジインターナショナル(本社・東京)がこのほど、日本初上陸となるグイド(Guido)の国内展開をスタートさせます。
化粧箱(製品を収める厚紙製ボックス)にプリントされたグイドのブランドロゴ。その左下には「HECHO A MANO EN ARGENTINA(=ハンドメイド・イン・アルゼンチン)」の記載も!
この名からイタリアのブランドと思われる人もいましょうが、実はこれはなんと、アルゼンチン共和国の首都ブエノスアイレスにあるシューファクトリーの社名&ブランド名なのです。なにぶん、日本からは地球の裏側の国ということもあり、あまりなじみのない同国ですが、そこで作られる靴もまた、ほとんど目にする機会がなく、それだけにグイドの日本初上陸は注目すべきことかと思います。
アルゼンチンは南アメリカ南部に位置する連邦共和制国家で、かつての宗主国はスペイン。人口は約4080万人と思いのほか多いものの、領土はラテンアメリカでブラジルに次いで2番目に広く、世界全体でも第8位の面積をもつ大きな国です。また、その国土は南北に長く、北部は亜熱帯に、南部は寒帯に属し、西では険しいアンデス山脈が南北に走り、東にパンパと呼ばれる大草原が広がり、また、南緯40°以南のパタゴニア地方では荒涼たる砂漠が広がっています。
こうした広大な平地を利用し、アルゼンチンでは古くから農業とともに牧畜業が盛んで、第二次大戦以前は、各国への農・畜産品の輸出により利益を得て、世界有数の富裕国となっていました。現在でも世界的な大畜産国で、日本ではなじみがないものの、肉料理中心の充実した食文化の歴史があるそうです。そして食肉産業が活発ということは必然的に皮革の生産量も多いわけで、これを背景とする製靴も盛んで、北米などを主な輸出先に多くの靴が生産されており、グイド社もそうしたメーカーのひとつであるのです。

約70年の歴史をもち、多彩なオリジナル製品を展開中

「シングルソールローファー 4219」では、アッパーに100%アニリンなめしによるレザーを採用。2本の針を使って施されるハンドモカステッチ、メタルリングとともに甲を飾るレザーフリンジ、素足にも優しいアンラインド仕様など各所に職人の手技が実感できる、味わいあるモカシンシューズだ。
グイド社は1952年、ブエノスアイレスにてルチアーノ・バニャスコ氏により、モカシンシューズとドレスシューズのメーカーとして創業。ブランド名の「Guido」は、ブエノスアイレスで最もエレガントな地区を通る大通りの名に由来しています。現在、モカシン以外にもメンズ、レディス問わずドレスシューズ&ブーツ、カジュアルシューズ&ブーツ、パンプス、サンダル、ドライビングシューズ、スニーカー、ビジネスバッグ、カジュアルバッグ、トラベルバッグ、革小物、レザーベルト、レザージャケットなど多彩な革製品を生産・販売しています。また、同社が採用する革は多岐にわたりますが、なかでもロシナンテのコードバン(「アルゼンチンコードバン」と呼ばれることが多い)はグイドを象徴するマテリアルといえます。
ロシナンテは、ブエノスアイレス・ハーリンガムに拠点を置く、ホースレザーとカーフスキンのタンナー、リズ・ローヤル(LIS ROYAL)社が、自社でなめし&加工した製品革のコードバンに付したブランド名です。ROCINANTEはスペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスが1605年(前編)と1615年(後編)に出版した小説『ドン・キホーテ』の中で、主人公ドン・キホーテが乗っている馬の名前。コードバンの原皮が馬の尻革であることから、このブランド名が付されたと推察できます。
リズ・ローヤル社には40年以上の歴史があり、同国内の乗馬ブーツメーカーなどに製品革を供給してきたようで、コードバンの生産は15年ほど前にスタートさせており、その革は日本でも6、7年ほど前に初上陸を果たし、一部の国内メーカーに使用されてきました。ちなみに、米国などでは革を取るための馬の屠殺が禁じられていますが、アルゼンチンではそのようなことはなく、それゆえにホースレザーやコードバンが比較的安定して供給できるという背景があるようです。

グイドの魅力を体感したくば、まずは足に優しいモカシンから

ヒールカップには、本格モカシンらしくキッカーも! 靴を脱ぐ際、もう片方の足でこの部分を踏みつけることで、素足履きでも脱ぎやすくするためのディテールである。
話がアルゼンチンコードバンに逸れてしまいましたが、今回、グイドの日本デビューモデルではコードバン製ではなく、アッパーがカウハイドのローファーとなります。同社が十八番とするリアルモカシン(底付けはマッケイ製法)の1タイプで、ビット(馬具のハミ、くつわがモチーフの飾り金具)とレザータッセルの組み合わせがユニークな、グイドの定番モデルです。アッパーやレザーソールは大変柔らかく、これにアンラインド仕様やモカシン&マッケイ製法が相まって返り良く、素足にも優しいコンフォタブルな履き心地となっています。
マッケイの出し縫いを隠すヒドゥンチャネル仕立てのレザーソールを採用。ハイブリッジインターナショナルによると「本底の最終仕上げに、伊・ボローニャの某名門ブランドによる往年のマッケイシューズを彷彿するものがあり、それが好もしい印象」であるとのこと。
ハイブリッジインターナショナルは以前、米国の名門ウオークオーバーのインポートを手がけていましたが、当時(約10年前)、同ブランドのイタリアエージェントがグイドも取り扱っており、その商品を実見して以来、気にかけてきたそうで、今回、満を持しての日本での展開となった次第。今後、コードバンモデルも日本で購入できるようになるか否かはわかりませんが、ハイブリッジインターナショナルとしてはもっかの感染症流行が沈静化した際、スタッフがブエノスアイレスの工場を訪ねて、同社のアイデアを盛り込んだコラボレーションモデルの開発に取り組みたいとしています。と知れば、グイドのこれからの展開が、ますます楽しみなものになろうというものです。
お問合せ:ハイブリッジインターナショナル TEL.03-3486-8849 highbridge.co.jp

文:山田 純貴