ビスポーク的エッセンスを身にまとった風格ある男靴
GEORGE CLEVERLEY(ジョージ クレバリー)
※この記事の情報は、2006年7月21日の公開時のものであり、現在では正確とは限らない場合があります。
レディメイドの靴にビスポークシューズ(フルオーダーメイドの靴)で散見するエレガントなデザイン、繊細なフォルム、手の込んだディテールなどを取り入れるという傾向は、この数年の高級紳士靴におけるトレンドのひとつといえる。ここにご紹介するジョージ クレバリーのストレートチップも、こうした時代の要請を受け、同ブランドとビームス(2006年当時)が共同で企画・開発した高品位な美靴なのである。
クレバリーといえば1958年、靴職人ジョージ・クレバリー氏によって創業され、今なお、その品質がロンドンの靴好きやファッション業界人らの間で大変高い評価を得ている、英国を代表する名門ビスポークシューズ・メーカーだ。1994年からレディメイドも展開しているが、本懐はやはりビスポークであり、それゆえにビスポーク的エッセンスをレディメイドに活かすセンスと技術には、他社とはひと味もふた味も異なるものがあるようだ。
では、この靴の場合はどうだろうか? たとえばアッパーに採用されているカーフはビスポークと同格のトップグレードであり、その仕上げは手磨きによる、いわゆるバーニッシュド仕上げが採用されている。ソールを見れば、ウエストにわざわざロールウエスト(踏まず革などを内蔵させて表面をアール状に仕立てたウエスト)が施されているし、靴の中をのぞけば、インソックライナーはつま先まであるロングタイプが取り入れられている、という具合だ。
こうしたこだわりのディテールに加え、このモデルをひときわ個性的なものにしているのがトゥキャップとバルモラル(内羽根)をつないでいるヴァンプと呼ばれるパーツと、そこに施されたパーフォレーションがヒールまで長く延びたデザインである。通常、レディメイドでは見ることのないこのユニークなデザインが、ほどよくボリューム感のある、しかしスタイリッシュでモダンな木型と実にマッチしており、そのバランスが実に絶妙なのである。
クレバリーの靴はいずれもエレガントで美しいが、このモデルにはそうした美しさとともに、ビスポークゆずりの品格と威厳が備わっており、それがこの靴を大変魅力あるものにしているわけなのだ。
GEORGE CLEVERLEY(ジョージ クレバリー)
アイテム:バルモラル・ストレートチップ
製法:グッドイヤーウェルテッド
木型:337
アッパー:カーフ
ソール:シングルレザーソール(ヒドゥンチャネル仕上げ)
カラー:タバコ
※2006年7月21日掲載記事
文:山田 純貴 写真:綿屋 修一