ア・テストーニの新作スニーカーが秀逸だ。アッパーには高級なカーフスキンを採用し、ハンドペイントによるグラデーションがとても美しく、側面下部に記された「TESTONI」のロゴも控えめで洗練された印象を与えてくれる。細かなところでは一番上のハトメを表ハトメにしている点だ。デザイン的な要素ももちろんだが、力のかかる箇所なので補強という意味も込められているに違いない。
また、ミッドソールにはテストーニの頭文字である“T”をあしらった模様を刻印。アウトソールのトレッドパターンにはブランドを象徴するHexagon(六角形)柄が記されている。これはブランドが1929年に誕生したイタリア北部のボローニャに由来する。この街にある協会の床のデザインからインスパイアされているのだ。
このスニーカーの魅力は他にもある。むしろ最大の魅力が詰まっていると言ってもいい。それはホールカットのデザインになっていることだ。一般的な紐タイプのスニーカーのアッパーは複数枚(3枚程度)の革のパーツで構成されているのだが、ホールカットは1枚の大きな革を使って仕立てる方法なのだ。それだけ傷のない上質の大きな革を用意しないと作れないというわけだ。しかも靴は曲面の連続で構成されているため、革をつり込んで立体的に仕立てていく必要がある。テストーニは革靴を作るノウハウを活かしてこのホールカットのスニーカーを作っているのだろう。それにしてもホールカットのレザースニーカーとは珍しい! 希少な一足だ。
a.testoni(ア・テストーニ)

70526 wine/caramel(別途カラーあり) 79,200円(税込)
お問合せ:ア・テストーニ 銀座本店 TEL.03-3575-8025 atestoni-japan.com

文:倉野 路凡