「The Art of Shoemaking」のモットーのとおり、ビスポーク職人の福田洋平さんが作るハンドメイドシューズは単に実用品であることを超克し、息をのむほどの美しさと気高さを身にまとった芸術作品へと昇華しています。これは2008年の「ヨウヘイ フクダ(Yohei Fukuda)」の立ち上げ以来、揺らぐことなく貫かれ、いまや福田さんに賛を寄す人々は国内のみならず、海外にも数多く存在します。

そんな日本が誇る靴の名工である福田さんは、従来からのフルビスポークなどに加え、創業10周年となった2018年に既成靴の「レディ・トゥ・ウェア(Ready to Wear)」を立ち上げました。これは、履き心地などに影響をもたらす、吊り込みや、すくい縫いは手作業で行われ、出し縫いはマシンで行うという9分仕立ての靴。現状、レディ・トゥ・ウェアはオックスフォード(内羽根式の短靴)4型のみの展開となっていますが、このほど、これらにローファーが加わることとなりました。

カジュアルだがエレガント! この絶妙塩梅が福田流

その新作の名は「トバゴ(Tobago)」。これはカリブ海にある英国連邦加盟国トリニダード・トバゴ共和国の、白砂のビーチが人気の島の名に由来しており、ここからわかるとおり、ビジネスタイプの既存4型とは趣を異にする、リゾート感あるスタイルに仕上がったスリッポンなのです。

「以前から多くのお客様に『旅行や週末に履ける、カジュアルだけどスマートなローファーを』というリクエストをいただいていました。また、そうしたシーンのみならず、例の感染症流行で在宅勤務などが増えたことも受け、自宅からちょっと外出といった際に履いて気持ちが上がるような、そんなカジュアルなモデルを作ろうと考えました」
トバゴ出身のビジネスパートナー、アンドレス・ヘルナンデスさんとともに企画・開発したという本品は、甲サドルのないスッキリとした表情のスエードローファー。スマートラウンドトウの木型はカジュアルなスタイルとはいえ、そこは「ヨウヘイ フクダ」の製品だけに品を失することなく、細部まで繊細で美しい仕上がりです。
「昨今のライフスタイルを勘案しますと、クラシックな革靴ほどのフォーマルさはいらないけれど、スニーカーではためらわれるシーンが多々あると思うんです。たとえば週末に街で知人に会うときとか、出張での飛行機の中とかですね。そうしたTPOで求められる品格と快適さを両立させたいということで開発したのが、この『トバゴ』です」
モカからタンのパイピングにつながる1本の流線は絶妙にして優美であり、「ヨウヘイ フクダ」のアイコンであるスワンネックをモチーフにしたヒールカウンターの切り替えラインも小粋。また踵はシームレスとなっている。ラバーソールは薄く、まるでレザーソールのごとくスマートだ。また、小ぶりなヒールカップは踵(かかと)をしっかりホールドし、歩行時の踵浮きを防いでくれる。

こだわったのはスリッポンらしい柔らかい履き心地

ビスポークにも採用しているというスエードはしなやかで、発色絶妙にして、毛足短めの起毛が織りなすきめ細やかな諧調が美しいトップグレードで、フルライニングのレザーも柔らかく、足当たりのよい上質なもの。本底はラバーソールで、これもまた非常に柔らかく、しかし耐久性に富むオリジナルのパーツです。

ビスポークを思わせる内振りの形状は、人の足形に適ったもの。タイトに絞り上げられたウエストは内踏まずを快適に包み込んで支持してくれる。また、ブランドロゴが刻印されたオリジナルラバーソールは柔らかいが、耐久性に富む。
しなやかなスエードや薄いラバーソールを使い、セメンテッド製法で作られているため、フルライニング仕様ながらも、片手で容易に曲がるほどに屈曲性に富む。これなら素足履きでもストレスにならず、軽快に履くことができそうだ。ちなみにアッパーがスエードのみの展開であるのは「曲がってもシワが残りにくいから」(福田さん)とのこと。
ところで、本品で一番驚かされるのが製法です。実はこれ、セメンテッドだからです!
「素足履きにも対応する、というローファーの利点を最大限に活かしたくて、踵の吸い付きや返りの良さを優先させるべくセメンテッド製法を選びました。これにスエードやライニング、ラバーソールのしなやかさが合わさり、片手で容易にグニャッと曲がるくらいの柔らかい履き心地が実現できました」

ちなみに前述したとおり、同じ「レディ・トゥ・ウェア」の既存4型は日本製となるわけですが、「トバゴ」では「ヨウヘイ フクダ」とイタリアの協力工場との共作となるのだとか。福田さんが作る靴といえば英国トラッドのスタイルをイメージしますが、この新作にはどこかイタリア靴らしい艶気を感じていたので、この話を聞いて大いに納得したものです。
優美なシルエットを見せるスマートラウンドトウの木型を採用。また、モカはプレーンなトウ&甲に芯材を仕込み、そこに縫製を施したもの。縫い糸は細番手で針目のピッチも狭いため、その縫製は控えめで、上質なスエードに品良く溶け込んでいる。
カラーはタバコ、ラバーニャ(ダークグレー)、コーヒーの3色展開で、福田さんによると「色とサイズによって数に限りがある」とのこと。バネチューブ式の木製シューツリー、およびシューポーチが付属し、価格は税込みで11万円(予価)。東京・青山の「ヨウヘイ フクダ」、およびオフィシャルオンラインにて来たる5月より販売予定です。
「靴単体で見たとき以上に、足入れしたときのほうがカッコよく見える靴です。ジャケットスタイルからチノ、ジーンズまで幅広く履いていただきたいですね」

Yohei Fukuda(ヨウヘイ フクダ)

東京都港区北青山2-12-27 BAL青山2階
TEL:03-6804-6979
E-MAIL:info@yoheifukuda.com
URL:yoheifukuda.com
営業時間:11~20時
定休日:日曜

文:山田 純貴