フウガシン FUGASHIN

アーチをタイトに絞り上げたウエストライン。カカトを包み込むヒールカップやピッチトヒール。これらビスポーク由来のディテールが満載のこの靴は、アッパーのどこにも切り替えのないリアルホールカットの既成靴です。
 
今回紹介するのは日本のシューメーカー「ビナセーコー」が展開するブランド「フウガシン」の今季モデルの1作です。同社は長年にわたり有名シューメーカーやアパレルブランド、老舗靴店、一流百貨店などのOEM生産に取り組むなかで、グッドイヤーやマッケイのみならず、ノルベジェーゼやボロネーゼ、ハンドソーンウェルテッドまでこなす実力派です。
 

フウガシン FUGASHIN

 
では写真の靴を見てみましょう。ホールカットとはトップホール(履き口部分)以外に切り替えがないシンプルなデザインのことですが、既製靴ではカカトまたは内踏まずに切り替えがあるものがほとんどで、切り替えがまったく無い、文字通りホールカットをラインナップするシューメーカーは、実はほとんど存在しません。というのも、リアルホールカットはとにかく製靴に時間がかかるからなのです。
 
製靴法を説明しますと、まずは楕円形に切りだしたアッパーの革をラストに添わせトップホールをカットします。そのアッパーにライニングを縫い合わせてから再度ラストにつり込むのですが、切り替えがない分ラストの曲線を再現する作業は困難を極め、吊り込みは熟練した職人でなければできない極めて難度の高い作業です。
 
また、通常の吊り込みは水に濡らした革をハンマーで叩いたり、熱を加えるなどしてラストに添わせるのですが、これを過度に行うと革にかかる負担が大きくなるため、本品ではこうした作業を最小限におさえ。アッパーを水に濡らしては吊り込みを行う果てしない手仕事を繰り返し、ラストに沿った美しい曲線を生み出しています。
 
これに加え、本品を個性的に見せているのが、アッパーに採用された仏アノネイ社製クラストカーフを、つま先の明るい茶色からカカトにかけて濃くなる茶色に手染めした繊細で深みあるグラデーションです。これが靴全体の印象をいっそうクラス感あるものに見せているのです。
 
取り扱いのワールド フットウェア ギャラリーによれば、「果てしない手仕事に相応の敬意を払える方に、世界でもほとんど存在していない靴を履けることに価値を認めていただける方に履いていただきたい。」とのこと。ワンランク上の1足をお探しなら、このリアルホールカットは、間違いなくその最右翼なのです!